コラム ~糖尿病・生活習慣病とは

生活習慣病とは、生活習慣によって発症する病気の総称

 生活習慣病とは、生活習慣によって発症する病気を総称して言います。具体的には、脂質異常症(高中性脂肪血症)、高血圧症、2型糖尿病、脂肪肝・脂肪肝炎、高尿酸血症・痛風などを言います。また、これらに起因する動脈硬化症(脳梗塞症、心筋梗塞・狭心症などにつながります)も含めます。広義では、喫煙などの生活習慣に影響を受けるがんなどを含める場合もありますが、ここでは、そこまでは踏み込まずに説明いたします。

我々を取り巻く生活習慣

 我々、日本人の生活習慣は、運動不足に陥りがちで、かつ、飽食の時代でもあり、肥満につながりやすい生活習慣になっています。一つには、自動車の普及の進んだことがよくあげられます。子供の運動不足も30年前と比べると減少が著しいと新聞記事でも取り上げられました。大人では、東京で電車通勤の方は、駅まで歩き、駅の中を歩き、会社まで歩く部分があるので、まだ、運動量が確保できていますが、地方で車での移動生活が中心になっている地域では、生活習慣病の頻度が多くなっています。具体的には「2016年の厚生労働省人口動態統計月報年報」では、糖尿病の死亡率は、青森県が一番高く、2位が秋田県、3位が福島県でした。これは、雪国では冬季は雪に閉ざされて、運動量が減ること、通勤も自動車での移動が主となり、運動量(歩行数)が少なくなっていること、塩分摂取量が多い多量飲酒者が多い喫煙率が高いことなどが要因と考えられています。2017年では、徳島県、青森県、秋田県、香川県の順。雪国でない県でも多い地域がありますが、四国は歩行数が少なく、その中でも糖質摂取量(うどん)と塩分摂取量の多さが関係するのではないかと推察されています。

 また、食習慣も大きく変わりました。食生活も欧米化が進展し、肉の摂取量が増え、動物性脂肪の摂取量が増えました。ハンバーガーやピザ、フライドポテトなどのファストフードの普及も影響があると考えられています。顕著なのは沖縄県です。沖縄クライシスでよく知られていますが、アメリカ合衆国の占領下におかれたため、アメリカの食文化が流入し、日本国内でもいち早く食習慣の欧米化が進みました。かつて、沖縄県は日本で最も長寿な県と言われていましたが、厚生労働省が発表する「全国都道府県別平均寿命」ランキングにおいて、沖縄県の男性が、2002年に前回の全国4位から一気に26位に転落し、危機感が強まりました。沖縄では、いち早くアメリカのファストフード店が進出し、スパム缶が売られ、また、揚げ物文化(二度揚げ、三度揚げ)などで脂質の摂取量が増えたようです。その沖縄県では、医療に取り組む方々が中心となって、沖縄の伝統的食文化を見直し、生活習慣病対策に取り組み始めています。

生活習慣病になる仕組み

 さて、ここで、上記の生活習慣病がどういった仕組みで、病気につながるのでしょうか?まずは、運動不足、過栄養、高脂肪食により肥満が進みます。内臓脂肪が蓄積し、内臓脂肪型肥満となります。日本人は軽度の肥満の段階で、欧米人に比べて痩せていても(見た目は細くても)、お腹がポッコリして、内臓脂肪蓄積の進んでいる人が多いことが東京大学で調べた結果わかっています。CTを用いた検討で、同じウエスト周囲径ですと日本人は白人よりも内臓脂肪蓄積面積が大きいことがわかっています。(Kadowaki T, et al. Int J Obes 30:1163-1165,2006)。少しの肥満でも内臓脂肪が蓄積し100㎠以上になると、アディポカインの分泌が低下して、TNF-α、MCP-1、IL-6などの炎症性サイトカインの分泌が増加し、インスリンという血糖を下げるホルモンの効きを悪くします(これをインスリン抵抗性とか、インスリン感受性の低下といいます)。また、内臓脂肪が多くなると血液中への遊離脂肪酸の放出が増え、これが膵臓にとって悪影響を与え(脂肪毒性といいます)、インスリンの効きを悪くしたり、インスリン分泌を減らし、血糖値の上昇につながります。肝臓にも遊離脂肪酸が流れ込み、中性脂肪の合成増加を引き起こし(高中性脂肪血症)、肝臓に脂肪沈着を促し脂肪肝をきたします。中性脂肪が高値になると善玉コレステロールといわれるHDL-Cが低下します。脂肪肝は脂肪肝炎という炎症を伴った状態になり、将来肝臓がんになるリスクを高めることも分かっています。肝臓への脂肪蓄積は肝臓のインスリン抵抗性を増大させ、糖の取り込み障害を引き起こし、血糖をあげることにつながります。また、筋肉への脂肪蓄積で筋肉のインスリン抵抗性を引き起こし、糖の取り込み、利用を障害します。インスリン抵抗性が増大するとインスリン分泌を増加させることで代償する機構が働き、高インスリン血症をきたします。高インスリン血症になると、腎臓でのナトリウムの再吸収が増加し、交感神経系を亢進させ、血圧の上昇をきたします(高血圧症)。

まとめると・・・内臓脂肪の蓄積が原因

 まとめると、内臓脂肪型肥満から、耐糖能異常(糖尿病)、脂質異常症(高中性脂肪血症±低HDL-C血症)、高血圧症をきたしますが、これらは総称してメタボリックシンドローム(メタボリック症候群)と言われています。わが国では、内臓脂肪症候群という概念を松沢佑次先生が提唱されていましたが、こちらのほうがしっくりいく気もします。内臓脂肪の蓄積がすべての原因となっており、それに基づき様々な病態が引き起こされるからです。

 これらの疾患は、動脈硬化を進展させ、心筋梗塞・狭心症や脳梗塞症・脳血栓症を引き起こすもととなるのです。

次は合併症についてお話しします。(準備中)